登録有形文化財
明治から令和へと時代を受け継ぎながら成長し続ける「はかり屋」
所在地:埼玉県越谷市越ヶ谷本町8-8
主要用途:複合店舗
工事内容:古民家再生(リノベーション)
敷地面積:940.42 ㎡
建築面積:236.62 ㎡
延床面積:334.93 ㎡
構造/工法:木造伝統構法・石場建て(店蔵・座敷)/土蔵(内蔵)/鉄骨造(離れ)
竣工:2018年3月
越谷市の中心市街地は、江戸時代に日光街道沿いの宿場町として賑わってきた歴史があります。
今ではその面影は薄くなってしまいましたが、まだその名残を感じることが出来ます。
その代表格として残されてきたのが、はかり屋さんです。
秤を売っていた事で地域の皆さんから、はかり屋さんの愛称で親しまれてきたお店だったようです。
そんなはかり屋さんも、時代の流れと共に商売を閉じ、ここしばらくは住居機能として維持されてきました。
その後、所有権が地元不動産会社へと移り、店舗としての維持活用の検討がなされるようになりました。
当初実測調査を依頼され、建物の現状把握を行いました。
その後建物を補修する事で、保存活用が出来る事を確認し、登録有形文化財を目指す為に、まずは出来る限り約120年前の建設当時の形に戻す計画を立てました。
店前の店蔵、茶の間、中座敷、奥座敷と蔵については、内部外部共に、使えるものは徹底的に使いながら傷んだ箇所を補修したり無作為に付け足されてきた部品を除去する事に徹しました。
大きく改造されていた水周りは元々は無かったはずの風呂を撤去したり、新たに多機能トイレを新設するなど、大胆な足し引きを行いました。
また、裏口であった勝手口をメインの玄関口にする為に、美しい格子と達磨窯で焼いた敷き瓦の土間が印象的な玄関に仕立て上げました。
素材の演出として玄関ホールの床に名栗(なぐり)のフロアーを採用し、足の裏からもはかり屋の重厚感のある趣が伝わるように工夫をしました。
蔵の外に付属していた納屋は、完全な物置からギャラリースペースのような多目的スペースへと劇的に生まれ変わりました。
元々の納屋の素朴さを活かしながら、半屋外的な空間を持った面白いスペースとなりました。
昭和の時代に増築された2階の個室と別棟に建設されているプレハブの建物については、登録文化財とは切り離し、最低限の使用に耐えられる修繕としました。
この様にはかり屋は様々な要素が混在しながら不思議な魅力を発信する空間として生まれ変わりました。
明治から平成へと時代を受け継ぎながら、自然発生的に成長し続けるはかり屋の魅力を是非感じていただければ幸いです。